志のある三流は四流だからね【カルテット第5話】
カルテット5話、見ました。
以下ネタバレを含みます。
毎週楽しみにしているこのドラマ。
最高の離婚から大ファンである坂元裕二さん脚本のラブサスペンスミステリーということで、必ず録画して1秒たりとも見逃さないよう、画面にかじりつく1時間です。
さてこの第5話、今までの4週間で築いたカルテットの空気感が、ぼろぼろと崩れていく音が聞こえるようでした。
何と言っても吉岡里帆さんの演技。
人間は嘘で塗り固められた存在で、それを隠しながら、みんな平穏な顔をして生きているという暗黙の了解を、まるでオセロの盤ごとひっくり返すように攻め立てるあの勢い。
出てくる言葉ひとつひとつに腹が立ち、胸が痛み、もうこれ以上はやめてくれ、言わないでくれ、と思ってしまいました。
彼女が巻さんに容赦なく襲いかかる隣で、巻さんを守るために必死に話題を逸らそうと奮闘するすずめちゃんですが、結果的に彼女の言葉の剣は巻さんではなくすずめちゃんの心を傷つけることとなりました。
自分の秘密を知っても世間の常識から守ってくれた巻さんのことをずっと騙していた罪悪感や、それが全てバレてしまった絶望感、また居場所がなくなるかもしれない孤独感、いろんな感情が押し寄せて落ちた涙だと思います。もちろん、一番は巻さんへの懺悔の気持ちが大きいとは思いますが。
後半部分の怒涛の会話劇に全てを持って行かれそうな5話でしたが、前半にも名言が散りばめられていましたね。
タイトルにもしましたが、今回最も心に刺さった言葉はこちら。
志のある三流は四流だからね
カルテットドーナツホールとしての夢を追いかけ始めた4人ですが、充分な練習もできず不安なまま迎えた本番、頼まれたのはまさかの弾きフリ。
これは仕事と割り切って、弾きフリに徹するか、奏者としてのプライドを守るか、4人は決断を迫られます。
結果的に巻さんの言葉でみんな納得し、三流なりの仕事として無事コンサートを終えますが、帰り際、あまり達成感や充実感が得られなかったことを主催側に気づかれてしまいました。
わたしもかつて楽器と音楽に関わっていた時期があるので、お客様の前で演奏しているフリをすることが、奏者にとってどんなに虚しいことかは、手に取るように分かります。(始めたばかりの下手な時期は、フリも多かったので。)
わたしの場合は仕事ではなく、ただ好きでやっていただけでしたので、今度は絶対にフリは嫌だと思って新たなやる気の源となっていました。
弾きフリを依頼され、自分たちの実力不足を突きつけられるかのようで、悔しさ虚しさがこみ上げますが、30代で夢の終わりが少しずつ見える今、いつまでも眩しいことばかり言っていられる訳でもなく…という難しいところですね。
三流なりに、と割り切って仕事をこなした4人が去った後のこのセリフは、夢を追いかける人々の心に刺さり、鈍い痛みを残したことでしょう。
どんなに割り切って、諦めて、妥協しても、心の中で消えない憧れが邪魔をする。
三流だと分かっている、自分にもそう言い聞かせているのに、消えない志が枷になる。
夢を見すぎた三流は、がむしゃらに頑張ることしか許されない三流の世界からも追い出され、いつの間にか四流へと成り下がる。
救いのない言葉だと思いましたし、あまりに悲しすぎると思いました。ただ、それと同時に頭に冷水をかけられたかのような衝撃もありました。
夢を守りたいのであれば、形振り構わず頑張り続けるしかないのだと。
憧れや志、プライドを持ってしまっては、そこで立ち止まってしまうのだと。
坂本さんのドラマには、心を抉られるようなセリフがぽろりぽろりと混ぜ込まれており、見る人によって様々な角度から心に刺さったり、時には癒したりするのでしょう。
必ずしも世間で高く評価されるドラマじゃなくとも(面白さが視聴率に反映されなくとも)、わたしはこれから先もこのドラマを終わりまで見届けます。
きっと心が痛む場面が、まだこれから何度もあるのでしょうが、それでこそ坂本さんのドラマですから。
来週も楽しみにしています!
それでは、また。