巻き戻ってる感じありますよね【カルテット第7話】
カルテット7話、見ました。
以下ネタバレ含みます。
ついに巻夫婦の結婚に終止符が打たれた第7話。一時も息がつけないような怒涛の展開が続き、最後にはようやくいつも通りの日常が、カルテットに戻ってきました。
日常に戻った食卓のシーンで、家森さんが何度も繰り返していたこの言葉。
巻き戻ってる感じありますよね。
そう、この言葉の通り、第7話は巻き戻し、そして不可逆が詰め込まれた回となっていました。
まず、オープニングとエンディングの逆転。エンディングから始まる=巻き戻し再生であり、この話は初めから巻き戻されているんですよ、と言わんばかりの演出となっていました。
そこから巻き戻しに気をつけて見てみると、いくつか該当するポイントが見つかります。
・家森さんの滑走(素早く落ちて、素早く元の位置に戻りました)
・巻夫婦が再会したことによる関係性の巻き戻し
・一度死んだと思われた有栖が実は生きていた(生→死→生への巻き戻し)
・有栖が運転する度に見せる車のバック走行(坂道を後ろ向きに駆け上がる場面は本当に巻き戻しているかのようでした)
しかし、これらの巻き戻し事項が散りばめられていながら、全て元通りにうまく戻ったか、と問われると決してそうではありません。
1話で唐揚げにレモンの不可逆性が話題になっていましたが、それは7話になっても変わりません。一度変わってしまった、進んでしまった時の流れは、決して元に戻すことは出来ないのです。
家森さんが1回目に滑り落ち、素早く巻き戻ったかのように戻って来ますが、その後また滑り落ちてしまっています。滑り落ちるということ自体は同じですが、1回目と明らかに違うのは、頭にクリティカルヒットした猿用の罠です。(痛そうでしたが、笑ってしまいました。)
落ちて、登って、また落ちる。同じ繰り返しのようでいて、違うのです。
また、巻夫婦の関係性も、不可逆なものでした。再会したばかりの時、真紀はずっと持っていた夫である幹夫への恋愛感情が沸き上がり、髪のハネを直しグロスまで塗り直します。
そして全てを聞いた後、一緒に逃げると決意し、自分の人生はいらないとまで言い放つ覚悟がありました。
ここまでは、結婚生活を送っていた頃と同じように、幹夫と生涯を共にする家族になりたいと願っているように感じます。
しかし、2人の関係は再会によって完全に巻き戻ったとは言えませんでした。
一緒に東京の自宅に帰り、2人にしか分からない遊びを楽しみ、食卓を囲んでおでんを食べる。ここまでは以前と同じでしたが、少しずつ2人の間に不可逆性が見えてきます。
夕食を食べながら交わす会話の話題には、以前には現れることのなかったカルテットのメンバーたちが登場し、以前はきっと飲んでいたであろうタイミングで、ワインを飲むことが出来なくなっています。
これは明らかに、2人の関係が前のものとは違うことを示しており、そこから徐々に終わりへと近づいていきます。
空白の期間を埋めるように、互いの気持ちを確認し合う為の話し合いで、幹夫はこう告げます。
幸せになって欲しいって思ってる。
感謝してる。ありがとう。
男女の関係が終わる時、これ以上に優しく、残酷な別れの言葉が他にあるでしょうか。
もう自分では幸せに出来ないから、君は君で幸せになって欲しい。ここから先は、自分がいなくても生きていって欲しい。
真紀の今後の人生のことを考えての言葉だったのかもしれませんが、共に生きる覚悟をし、一緒に幸せになりたくて結婚して、失踪後も一途に待ち続けていた真紀に対して、最後にこの言葉を投げつける幹夫は、やはりコンビニ強盗をするような人間だったのかと思ってしまいます。
一方の真紀も、この言葉で幹夫の気持ちと、この先の関係性を全て悟ります。
ずっと幸せだったよ。好きだったよ。
何もかも終わったことを確認し合う、この一言。
もう待つことも、好きでいることもしないのだと、誰よりも自分自身に言い聞かせたように思えました。
また、全てを悟る一言としてもうひとつ取り上げたいのが、真紀のこの言葉。
抱かれたいの。
幹夫を連れて逃げようとする真紀を、必死に引き止めようとするすずめに対しての言葉ですが、こう言われたすずめは、全てを諦めるしかないと悟り、握っていた手を離してしまいました。
どれだけ同じ家で暮らして、同じご飯を食べて、頭から同じシャンプーの匂いがしても、夫婦という絶対的な異性関係には太刀打ちできないという現実が、この一言に込められていました。
それにしても、すずめは真紀のことが相当好きなようですね。(手を握り直す場面に既視感を覚えたかと思えば、以前別府さんが真紀の自宅で手を握ったあのシーンでした。)
少し話が逸れました。
東京の自宅で楽しい最後の時間を過ごした夫婦は、ついに終わりの時を迎えます。
離婚届を提出して、警察署の前で握手を交わした2人は、もう今後の人生の上で交わることはないのでしょう。幹夫の後ろ姿を見送る真紀の、凛とした表情が印象的でした。
更に、全てが終わった後、別荘で幹夫に貰った詩集を火の中に躊躇なく投げ入れる潔さも、真紀の心がもう幹夫には無いことが分かる決定的な場面でした。
すずめとセッションをしながら見せた彼女の笑顔が、どこか切ないながらも、清々しいものだったので、本当に良かったと思います。
そして、一連の騒動を起こした有栖ですが、一度死んで(気を失って)生き返った有栖は、カルテットの女性メンバーからの信用はゼロに等しくなってしまいました。元の日常に戻り、いつも通りノクターンで勤務する有栖ですが、すずめは分かりやすく無視し、真紀もどことなく怪しむ視線を送ります。ここの関係性も、一度起こってしまった出来事の後では、元に戻ることはないようです。
このように、一貫して、巻き戻しと不可逆が描かれた第7話でした。
最後の食事のシーンも、いつもの日常のようで、別荘には幹夫のお義母さんがいたり、巻さんから早乙女さんになっていたりと、どこかが以前とは違っています。そんな中で何も知らない男性陣が平和でいいですね。
次回からは、4人の恋愛が進展していくのでしょうか。それともまだ誰かの嘘が4人を混乱させていくのでしょうか。
みぞみぞします!
それでは、また。