スカート日和

好きなもの、好きなこと。

何者でもなくても世界を救おう

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どどどどどどどどどっど〜ドラえもん

こんなに率直に、そして端的にキャラクターの名前を使った歌が、今まであったでしょうか。

 

2月28日リリースの星野源の新曲、タイトルはズバリ『ドラえもん』。映画ドラえもんのび太の宝島の主題歌として、リリースに先駆けラジオで公開されました。

ANNでリアルタイムで聞くことは叶いませんでしたが、radikoのタイムフリー放送を使って、もう何度も繰り返し聞いています。

 

 

ANNで公開された翌日だったでしょうか、ネット上で「星野源の新曲に中毒者続出」という記事を見つけ、概要を見てその歌詞の独創性に驚きました。

 

どどどどどどどど?

ど のゲシュタルト崩壊が起こりそうな羅列。一体どんなリズムで歌っているのだろうと気になり、すぐにYouTubeで検索しました。そして映画ドラえもんの予告動画を見つけ、再生。 

 

笑点のリズムを思い出させる明るいイントロと、まさに子供向け映画にふさわしく分かりやすいサビ。やはりドラえもんの主題歌とだけあり、子供向けのポップで元気な曲だな、というのが第一印象でした。しかし、1人の星野源ファンとして、そこで終わるわけにはいきません。フルで聞かなければ、とすぐにradikoで再生しました。

 

するとどうでしょう、なんだか胸に熱いものがこみ上げて、ぽろりと泣いてしまいました。

え、ドラえもんで?と、自分でも驚くばかり。

なぜ、わたしは大人になって、ドラえもんの映画主題歌を聞いて涙を流しているのでしょうか。

 

そして、何度か聞いているうちに分かりました。この曲は、決して子供向けなどではないのです。

星野源の、未来への思いが込められている曲なのです。歌詞の至るところに散りばめられた思いの詰まった言葉たちに、わたしは心を打たれていたのです。

 

少しだけ不思議な 普段のお話

指先と机の間  二次元

 

ドラえもんとは、不思議な道具こそたくさん登場しますが、描かれているのはまさに少年たちの日々の暮らしであり、普段の日常。 

そして、指先と机の間二次元、これはドラえもんの原作者である藤子・F・不二雄の目線でしょうか。

 

機械だって涙を流して

震えながら 勇気を叫ぶだろう

 

この歌詞を見て、わたしはハッとさせられました。

今を生きる人たちの間で、圧倒的な知名度を誇るドラえもん。生活の至るところでその姿を目にすることができるほど、国民的キャラクターとなっています。

また、漫画の中でもその存在は当然のようにのび太たちの仲間として扱われ、のび太にとってはもはや親友と呼ぶに等しいでしょう。

そのドラえもんを、機械と表現しているのです。

当たり前すぎて忘れがちですが、ドラえもんとは猫型ロボットであり、人間ではありません。パシャリと顔に水をかけられるようなこの事実を、彼はさらりと歌詞にしてしまいます。そしてその機械だって、映画の中では涙を流して、友達と一緒に勇気を叫んでいるのだと。

 

だからここにおいでよ

一緒に冒険しよう

何者でもなくても 世界を救おう

 

ドラえもんが人間ではなくても、のび太が落ちこぼれでも、そんなことは関係ない。

特別な存在になる必要はない。映画に出てくるような王子でも勇者でも賢者でもない、ただの猫型ロボットと泣き虫の小学生だって、世界を救うことができる。そんな希望ある世界。それがドラえもんの世界観に必要な全てです。

 

中越しの過去と輝く未来を

赤い血の流れる 今で繋ごう

僕ら繋ごう

 

そんな希望あるドラえもんの世界は、一体どこにあるのでしょうか。あるとすれば、それは紛れもなく未来でしょう。そこに近づくためには、今を生きるわたし達が、ドラえもんという希望を共有しているわたし達が、その未来に向かって進む以外に方法はありません。

 

君が残したもの 探し続けること

浮かぶ空想から また未来が生まれる

 

ここで言う君とは、ドラえもんか、はたまた藤子・F・不二雄のどちらでしょうか。どちらにせよ、残したものというのは数々のひみつ道具のことで間違いないでしょう。

ドラえもんひみつ道具たちは、現代においては最早、ただの夢の道具などではありません。技術の進歩とともに次々と実現され、それはきっとこれから先も、続いていくはずです。

元は1人の人間の空想を、たくさんの人たちの努力によって実現していくこと。その弛まぬ努力が、これから先の輝かしい未来を作っていくのです。

 

いつか時が流れて

必ず辿り着くから

君に会えるよ

そして、もはや日本だけではなく世界中の人々が待ち望むひとつの夢こそ、ドラえもんの実現でしょう。今は技術が足りず、ひみつ道具を作れるものから少しずつ作っている状態ですが、この先の未来で、必ずドラえもんは待っているはずです。

いつか時が流れて
必ず辿り着くから
君を作るよ

1番、2番では会えるよと歌っていた歌詞が、3度目にして作るよに変わり、より強い未来への思いが感じられます。星野源自身、ドラえもんの実現を待ち望むたくさんの人たちの中の1人なのでしょう。

ドラえもんに会える未来まで、あと何年かかるかは分かりませんが、その未来に辿り着くまで、私たちは日々を繋ぎ、命を繋ぎ、今という時間を次に繋げていかなければなりません。ドラえもんの実現に必要なのは、天才的な頭脳を持つ科学者や研究者たちだけではないのです。何者でもない私たちの、未来へかける希望と、生活の中で生まれる夢こそ必要で、それが結果的に明るい世界を作ることに繋がっているのだと思います。

 

星野源ドラえもんへの愛と期待が込められたこの曲を、映画を見た子供たちが口ずさむ日も遠くないでしょう。それだけでもう、ひとつの明るい世界が実現しています。

ドラえもんがある世界から、ドラえもんがいる世界へ。必ず訪れる未来まで、この曲を軽快に歌いながら、日々を生きていきたいと思います。

 

それでは、また。