スカート日和

好きなもの、好きなこと。

いのちの車窓から

久しぶりの更新です。

毎週の楽しみだったカルテットが最終回を迎えてから、もう随分と時間が経ってしまいました。最終回の感想を書く時間は、新年度を迎えた仕事の関係もあり、慌ただしい日々の中にすっかり溶け込んで消えてしまいました。

いつか書ければと思っていますが、最終回を無事迎えたということは、これからカルテットのお話が先に進むことはもうないわけで、それならそんなに焦って書く必要もないかな、なんてのんびり考えているところです。

 

ですので、今日はどうしても今日書きたいことを書くことにしました。

それは、星野源さんの最新刊、『いのちの車窓から』の感想に他なりません。

わたしは予てより星野源さんの大ファンなのですが、歌も曲はもちろんのこと、なにより彼の書く文章が大好きなのです。なので、この本が出版されると聞いた時からずっと楽しみに待っていました。雑誌ダ・ヴィンチ自体は読んでいないので、すべての文章がわたしにとっては初めて読むものとなります。

読み終えた感想、一言で言い表すならば、「もう最高」でした。自分の語彙力の無さに驚きますが、これ以外に言葉が見つかりません。

それではこれより先、詳しい感想に参ります。ネタバレ含みますのでご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

星野源さんの書く文章は、どうしていつもこう柔らかく、優しいのでしょう。言葉はその人の性格や内面が現れるものなのでしょうか。

30個のエッセイを約2時間かけて一気に読みましたが、読んでいる間中一度も文章からの圧力を感じませんでした。わたしは本を読むとき、その文章が持つ圧力に負けて、読むのを中断することがあります。うまくは言えませんが、長い文章を延々と読んでいると、突然ぷつりと集中が切れて、目で文字は追っていても頭の中には何も入らない状態になります。単に頭が疲れて集中力が無くなっただけかもしれませんが、これのせいで、今までどんなに面白い本でも、一気読みすることは出来ませんでした。

しかし、今回は何の問題もなくさらりと、まるで以前から当たり前に出来ていたことのように、一冊まるまる一気に読み終えてしまいました。これは、彼の書く文章、選ぶ言葉が自然と頭の中に流れ込み、ひとつひとつを理解しながら落ち着いて読むことができたからだと思います。文章に圧がない、それでいて決して飽きることなく最後まで読める。本当に不思議な本です。

 

全30個のエッセイは、思わず笑ってしまったり、思いがけず心にぐっときたり、種類豊富な充実した内容でした。つい笑ってしまったのは、"怒り"で書かれたハマ・オカモトさんとのちぎれるパンの話。確かに、パンは大体ちぎれるし、柔らかい。よく気がついたな、と感心してしまいました。

一番ぐっときたのは、"新垣結衣という人"。逃げ恥は毎週楽しみに見ておりましたので、撮影中の2人の様子は、とても興味深かったです。読んでみると、星野源はきっと人を褒める天才でもあるのだなと思いました。こんなに褒められては、新垣結衣さんも戸惑ってしまうんじゃ…?と思うほど。しかし、ここに書かれていることは紛れもなく事実であり、星野源が見た新垣結衣という人の素晴らしさが、存分に伝わってきました。日本を代表する女優が、素敵な普通の女の子だったこと。わたしはこれから彼女をテレビで見るたびに、これを思い出しては、応援してしまうのでしょう。

そして、全てを読み終えて、星野源という人もまた、素晴らしい普通の人なのだと思いました。もちろん音楽的センスや文章を書く才能においては天才で、天才だからこそ注目を集め、仕事をしていることは分かっています。しかし、そんな彼も、両親の前で寝たふりをする子供時代があり、夜中までゲームをするダメな大人であり、柴犬を愛する1人の男性でした。街が寝静まる深夜の時間帯を好んでは出歩いて、街の人々の生活を妄想する。住宅街に香るご飯の匂いを感じながら、ふらふらと時間をかけて家まで帰る。忙しい日々の中で日本の季節を感じながら、生きる。こんな当たり前の生活の中から生まれた音を、誰かに届けるために歌う。彼の音楽は生活が全てであり、そのものなのだと改めて気がつきました。

星野源という人を知ることが出来て、わたしは本当に良かったと思っています。日々の生活の中、どうしても仕事の忙しさや憂鬱に負け、当たり前のことが当たり前に出来なくなる時があります。しかし、そういう時にこそ、自分の生活をなにより大切にしなくてはならず、生きていかなくてはと思います。

自分の生活が何だったか分からなくなっている人や、失いかけている人に、この本を読んでほしいと思いました。そして、そうか自分の生活はこれだったと思い出し、深夜までゲームをしたり、ふらふら散歩に出掛けたり、大切な人と抱き合ったりしてほしい。そんな気持ちになりました。

 

改めて、この本を手に取って良かったと思います。これからも星野源さんの日々と共に、彼を応援していこうと心に決めた一冊でした。

 

それでは、また。

 

いのちの車窓から

いのちの車窓から